地下室。
シェルターついでに備蓄倉庫として使われているその部屋にて、現在ササガワハイジは閉じ込められている。
閉じ込められてほんの数時間だが、とにかくやることが無い。
「ハイジぃいい!!」
だからとりあえず寝ていた……のだが、急にハイジは目を覚ました。
文字通り、叩き起されたのだ。
顔をぐしゃぐしゃに泣き濡らしているニルによって。
「おはようさん。何やオレもう解放されるんか?」
「あんたッッ……どういう事!?」
「あぁ〜……不死になってた事かァ?」
「静に聞いたわよ!私が一回死んだ時にあんた、私を生き返らせるために不死にしたって!!」
遡ること数時間前、結婚式場にて。
ニルは神父を身を呈して護り、死んだわけだが。
そのあと、ハイジはこんな事を言っていた。
ーーお詫びと言っちゃ何なんやけど、ひとつ提案があんねん
その提案というのは、ニルを生き返らせること。
ハイジは、きょうだいの中で唯一、父親からの遺伝により不老不死である。
その不死のハイジの肉体の一部を喰わせることで、ニルを同じく不死の者に昇華した。
「同じ方法で、うちの親父も不死になったそうやでェ。あの小生意気な社長くんちゃんの仕業でな」
「ふざけんじゃないわよ!!私そんなの頼んでない!!」
「死にとうない、言っとったやんけ」
そう、言った。
あの時ニルはたしかに「死にたくない」と、生に縋り付いていた。
だからみんなで、実際にその願いを叶えてやったのだ。
しかし、勝手にそんなことをした負い目はあった彼らは、やたらその話題を避けたり二ルに親切にしていたわけだ。
これが顛末である。
「逆に良かったやんか。ずっと若いまんまやで?姉ちゃん美人さんやし」
「でも……もう私、ここにいられないのに……」
「あん?」
そこでニルは、クレオの件で神父を激怒させた事を話す。
神父は大人だから、べつに無闇に事情を喋ってニルを孤立させようとはしないだろう。
だが、ニルは神父が全てと言っていい。
そんな相手からここまで嫌われ憎まれてしまっては、もう……駄目だろう。
「どうしよう、私もう、どうしたらいいのか分からない……っ」
「ほんなら寝返ってくれへん?こっち側に」
「え……?」
「親父がな、精神不安定やねん。あんた精神科医やろ?寝返って、親父の力になってくれへん?」
ハイジは、あっけらかんとした態度で勧誘する。
ニルの所業は、いずれ仲間たちにバレるかもしれない。
そうなったらニルは追放されるに違いない。
しかも不死にされたパニックからも立ち直れていないのだ。
もはや深く考えることもなかった。
「……力になるわ」